Production Notes プロダクションノート

プリプロダクション:自らを超えるための挑戦

2007年秋からフジテレビ系で放送されたドラマ『SP』。実はそのスタッフたちはドラマ制作当初から映画化を強く意識しており、テレビドラマの枠を超えた濃密な物語性や数々の迫真のアクション、また技術面でも高画質な30pカメラで撮影されるなど、その斬新な作風は放送開始と同時に絶大な反響を呼び、深夜枠としては史上最高の視聴率をマーク。その当時に映画化が打診されたことを受け、2008年春に放送の『SP スペシャルアンコール特別編』で、『SP』映画化が大々的に発表されたが、企画成立は難航に難航を重ねた。

ドラマが終了し、いよいよ映画化に向けて動き出したスタッフたちは、「ドラマを遥かに超えられなければ意味がない」と、時間をかけて数多くのアイディアを出して行くが、それは次第に予算も撮影日数もかかる巨大なストーリーへと変貌していった。企画会議が重ねられるに連れてスケジュールは遅れ、遂には予定された時期の公開も危ぶまれるまでに。そして激しい議論の末、遂にスタッフたちは大きな決断をすることになる。それは公開予定をいったん白紙に戻すこと。そしてこの巨大なストーリーを物語上の章立てに合わせて2部作とし、複雑に絡み合う物語をじっくりと描く、最高の映画にすることだった。

また、脚本には派手なアクションシーンがふんだんに盛り込まれていた。予算面、時間面、そして何より安全面を考慮すれば、普通はこれほど大がかりなアクションは避けることが多い。しかしそのリスクをあえて背負うことを決意したプロデューサー陣は、第一に事故が起きないこと、第二に脚本通りの派手なアクションシーンを作り上げること、第三に少しでも予算と時間を節約することを目的に、「プレ・ビジュアリゼーション」の導入、ワールドワイドに活躍する大内貴仁が率いるアクションチームの参加、アカデミー賞に輝くVFXマン:ロバート・スコタックの招聘と、数々の新たな試みを実現させていく。

そして長期に渡ったこの準備期間に、何よりもスタッフたちを勇気づけたのは、まだ見ぬクランクインを目指して黙々とトレーニングを重ね続けた、主人公・井上薫を演じる岡田准一の「『SP』の物語に決着をつけたい」という熱い思いだったとプロデューサー陣は語る。自らアクションを組み立て、そしてスタントも演じたいという覚悟と気迫に、突き動かされないスタッフは誰一人いなかった。

こうして、映画化始動から実に1年半。ドラマに端を発する第四係の活躍の背後にある大きな力が、いよいよ国家を巻き込んで行く・・・その複雑で巨大なストーリーは「エピソードⅤ 野望篇」「エピソードⅥ 革命篇」の2部作となり、ドラマから続投の波多野貴文の陣頭指揮のもと、本格的に撮影がスタートすることとなったのである。

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プレビズ:効率と安全への挑戦

本作の準備段階で用いられた、革新的な技術が「プレ・ビジュアリゼーション」(=プレビズ)である。これは、各シーンのシミュレーション映像を、リアルなCGアニメーションでクランクイン前に作り上げてしまう技術だ。その導入の最大のメリットは、アクションシーンの撮影を効率的に行えること、そしてプレビズ映像から想定しうる、アクション撮影時の事故の予防策を考えられることにあった。

本作ではプレビズ制作を『ボーン・アイデンティティー』シリーズなどを担当したハリウッドのプレビズ専門会社:PLFに依頼。台本、キャストの身長データと衣裳写真、そしてグーグル・ストリートビューのロケ地のデータを日本からPLFへ送付。これらを元にPLFがアクションシーンのプレビズ映像を作成し、役者のアクション演出やカメラワークなどについて波多野監督や撮影の相馬大輔カメラマンが日米を結んだインターネット会議で徹底的に意見を交換、最終的なプレビズ映像を作り上げていった。

実際の撮影現場では各スタッフがパソコンやiPhoneなどでプレビズ映像を共有。プレビズにある絵だけを撮影すれば良いため、画期的なスピードで、そして安全に映画製作を進めることが可能となったのだ。

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8ヶ月間に渡るロケ撮影:限界への挑戦

『SP 野望篇』は、その大半が都内でロケ撮影されている。2009年9月5日、東京・市ヶ谷にて本作は遂にクランクイン。記念すべきファーストカットは、レストランで会食する議員たちの隣の個室で、岡田准一演じる井上と、真木よう子演じる笹本が会話するシーンだった。この前夜に岡田は、長い準備期間も相まってか、映画の撮影が始まるのは夢なのでは?と、眠れなかったという。しかし、撮影を見守っていた警護技術監修の木本亮いわく「井上が席を立つ時に、外していたイヤホンをすっと装着したんです。SPが自然に行う動きなんですが、今日はその演技指導をしていないんですよ。いきなりSPになりきっている岡田さんに驚きました。」

映画の冒頭を飾る、六本木ヒルズアリーナの地雷撲滅キャンペーンのイベントシーン。 四係が勢揃いするこの場面は、4日間の撮影にのべ4000人のエキストラを動員。アリーナ全体も飾りこまれ、写真展のテントやTシャツやCDなどのグッズ販売コーナーも設置される徹底ぶり。ステージ上のオーケストラの生演奏と会場いっぱいの人波も相まって、この日から撮影に参加した尾形総一郎役の堤真一、山本隆文役の松尾諭、石田光男役の神尾佑も、さすがに圧倒されていた様子?

大規模なシーンはこれだけではない。大勢のエキストラと西武鉄道の協力で実現した地下鉄駅構内での撮影では、テロリストと井上たちの追跡劇を、実際に地下鉄車両を使用して、終電から始発までの限られた時間の中で3日間かけて撮影。また、香川照之演じる伊達の政治資金集めのパーティ場面では、都内ホテルの大宴会場いっぱいに着飾った数百人のエキストラが参加、これまでの『SP』にはなかったゴージャスな映像となっている。

さらに、クライマックスとなる四係とテロリスト軍団の死闘は、ロケ場所を水道橋・六本木・晴海と変えながら、寒空の下でのべ3週間の夜間撮影が行われた。その格闘アクションは岡田准一が発案し、アクションチームと一緒に練り上げたものである。「彼の熱意と求心力がなかったら、ここまでのリスクは冒さなかった」と、関口大輔プロデューサーは語っている。この一連では、山本と石田が初めて見せる激しいアクションも見所だ。

2010年に入ると『SP 革命篇』の撮影もスタート。『SP 野望篇』の残りの場面と同時に撮影が進められていった。警視庁内のシーンの撮影はフジテレビ湾岸スタジオで行われ、特に再建された四係オフィスのセットでの撮影では「帰って来たなあ!」とキャストはもちろん、スタッフたちも懐かしいような、うれしいような表情を浮かべていたのが印象的だった。

そして遂に迎えた『SP 野望篇』のラストカットは、全編クランクアップも間近な2010年4月17日に横浜で撮影された。本作ではこの場面は一瞬しか登場しないが、その全貌が『SP 革命篇』で明らかになる時、『SP』という物語の衝撃的な核心が暴かれることに。。。

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上映開始からノンストップの20分間:大迫力の「フリーランニング」

『SP 野望篇』冒頭から20分間に展開するノンストップアクション「フリーランニング」。ここで繰り出されるアクションは非常にバラエティに富んでおり、歩道橋からの大ジャンプ、路地裏での三角飛びなど、数を上げるとキリがないほどだが、そのすべてを岡田准一自らが行っている。

最初の見せ場となる、井上が何台もの自動車を飛び越えて行くカットは、東京・田町で道路を封鎖して撮影された。このスタントは別場所で徹底したリハーサルを行い、撮影当日も何度もテストが繰り返された。「自分は間合いを合わせるから、もっと車もバイクも早く突っ込んで来て大丈夫」と、岡田准一自らカースタントチームと検討を重ね、タイミングを細かく調整。 ようやく迎えた本番、岡田の驚異的な身体能力がフルに発揮された撮影がOKになると、スタッフたちの緊張は一気に解けて、口々に「無事で良かった。。。」とつぶやいていたほど。

しかし、交差点でのクラッシュシーンはさすがに日中の路上では撮影できないため、千葉県の大型自動車教習所の跡地に、都内の交差点をそっくり再現したセットを建設。10台以上の実車を走らせながら、テロリストと井上がその合間をギリギリで駆け抜ける迫力満点の映像をカメラに収めた。そのセットの四方は合成用の巨大なグリーンバックで覆われ、後に背景映像がはめ込まれており、完成映像ではどこが合成カットなのか判別できないほどの迫真の仕上がりとなっている。

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『SP』の最大の魅力:超絶のアクションへの挑戦

ドラマ『SP』の企画立ち上げと同時に、岡田准一は、主人公・井上 薫のキャラクターを演じきるため、そして、役柄に求められるアクションを体現するために徹底的な肉体改造をスタートさせた。その成果をドラマシリーズで見事に披露し、ドラマ終了後に岡田がまずトライした武術は、ハリウッドのアクションシーンでは必須となるフィリピン武術「カリ」。相手を完膚なきまで制圧することを目的に、FBIが訓練に正式採用するほどの激しいトレーニングを2年半程続けた。「カリ」と並行して、打撃と組み技の高度な技術が要求される「修斗(USA SHOOTO)」、カンフーに様々な格闘技を取り入れた「ジークンドー(Jeet Kune Do)」へと幅を広げ、まさに格闘技漬けの日々を過ごしながら、いよいよ映画の撮影に挑むこととなった(ちなみに岡田は、「カリ」と「ジークンドー」のインストラクター免許を取得している)。アクション監督の大内は「高い能力を持つ井上を今度はスクリーンで演じるために、周囲の期待も含め岡田さんは相当なプレッシャーを感じていたはずです。さらに主演俳優が万が一怪我をすれば、すべての撮影がストップするという緊張感を背負って、よく8ヶ月という長期の撮影をこなしたと思う」と語っている。そして、高度なアクションのすべてを自らこなす岡田の身体能力の高さはもちろんだが、大内が最も強調するのは、ハイレベルのアクションをこなしながらも、どの角度、どのスタイルでカメラに収まれば、そのアクションの迫力を観客により伝えられるかを、常に意識して演技をしていたことだと加える。その一例として、表現の難しさから普段は敬遠される「寝技」での格闘シーンなどは、岡田だからこそ実現可能となったシーンと言えよう。『SP 野望篇』で次から次へと展開するアクションシーンは、岡田の身体能力により徹底したリアリティある映像を実現し、映画というステージにふさわしい迫力ある映像の数々がスクリーンを駆け巡ることとなった。肉体の限界に挑戦したシーンの数々、まさに『SP 野望篇』最大の見所を、スクリーンで目撃していただきたい。

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すべてがハリウッドクオリティ:日本映画への挑戦

『SP 野望篇』は、日本映画のクオリティをも超えようという、製作陣の挑戦の作品でもあった。まず撮影では、ハリウッドのOTTO NEMENZ社からレンタルしたARRIの機材を使用。ハリウッド映画ではARRIとPanavisionのカメラがよく使用されるが、本作はカメラワークの激しいアクション場面が連続することもあり、機動性に優れたARRIの機材が選択されている。そして照明は「東京で撮影されたのに、完全にハリウッド映画の画質になっている」と製作陣が驚嘆したことから、『ロスト・イン・トランスレーション』の和田雄二が手がけることに。

そしてVFXには『エイリアン2』『ターミネーター2』で二度のアカデミー賞受賞歴を持つロバート・スコタックをスーパーバイザーとして招聘。六本木や晴海でのVFXカット撮影にはスコタック自身が来日し、波多野監督らと共に撮影を監修している。また、CGでは表現しきれない重量感を出すため、ハリウッドの工房では六本木ヒルズアリーナや車両などの大型ミニチュアも作られ、合成素材として利用された。こうして完成した映像の迫力は、まさにケタ外れ!

クランクアップ後の仕上げ作業は、拠点を本格的にハリウッドへと移行。撮影が終了した35mmフィルムは、すべて世界最大の現像スタジオであるテクニカラー社へ送られ、4Kの高解像度でデジタルデータ化された。その後、徹底したデジタルカラーグレーディング作業で各カットの色調が完璧に揃えられ、『SP 野望篇』の映像マスターが完成。

さらに音響制作は、『スター・ウォーズ』シリーズのジョージ・ルーカス率いる、サンフランシスコ郊外のスカイウォーカーサウンドで行われた。日本から持ち込んだセリフと音楽に、スカイウォーカーサウンドの膨大なライブラリーから選ばれた効果音がミックスされて、6.1chのサラウンドサウンドが完成。その音響制作を担当したのは『トイ・ストーリー3』も手がけたトム・メイヤー。単なる効果音だけでなく、各場面の気配や心理描写までも音で表現された、濃密な音響演出が施されている。同スタジオの試写室で行われた試写では、その目が回らんばかりの迫力に渡米したスタッフたちは圧倒されてしまったほど。こうして『SP 野望篇』は、まさに劇場の大画面・大音響で体感するための映画に仕上がった!

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菅野祐悟入魂のスコア:究極のサスペンスへの挑戦

一度聴いたら忘れられないテーマ曲「Security Police」をはじめ、ドラマ版の数々の名曲がいまだに耳から離れないファンも少なくないだろう。それらを手がけた若手実力派・菅野祐悟が映画版でも続投、リズムと低音を思い切り強調した、サスペンスフルな新曲の数々を提供している。その2日間にわたる録音は、ドラマ版の2倍以上の規模のミュージシャンを集めて行われ、最終的に仕上がった音の厚みはドラマを遥かに凌駕!菅野自身、録音終了後にtwitterで「凄いのできちゃった」と書いているほど。全編クライマックスの『SP 野望篇』だが、音楽がよりボルテージが高めているのは間違いない。

そして主題歌は、ドラマと同じくV6の「way of life」で、ドラマで使用されたオリジナル版がそのまま使われている。本作は映画であっても『SP』のエピソードのひとつであり、これ以外に作品を象徴できる楽曲は考えられない・・・そう確信したスタッフたちの、これもまたひとつの挑戦であった。エンディングで「way of life」がスクリーンから流れると、緊張感がようやく溶けると同時に、『SP 革命篇』へと早くも気持ちが飛んでいくに違いない。次週が待ちきれなかった、ドラマ版の時と同じように。

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Twitter:新たな宣伝方法への挑戦

そして宣伝面でも、twitterの活用という新たな試みが採用された。本作ではクランクインと同時に、専任スタッフ「SP総務課」が撮影現場に密着、その模様を逐一、連日数十回以上つぶやいてリアルタイムにレポートするという独自のスタイルを確立。映画宣伝のtwitter利用例は珍しくないが、これほど徹底的なものは他に例を見ない。撮影現場に擬似的に立ち会い、映画への期待を高めてもらうことを可能にしたのが、本作のtwitter「総務課日報」の最大の特徴と言えよう。クランクインからクランクアップまでの6000を超えるつぶやきレポート(公式サイトではアーカイブも公開中)は、紛れもなく、『SP』キャストとスタッフの汗と涙の挑戦の記録なのである。
(文中敬称略)

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